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予備校の講師は実務ができないのか?売っている商品の話。

2026年09月07日 06:20
カテゴリ: 資格関係行政書士

予備校講師は実務ができないのか——行政書士が売っている「商品」の話

予備校講師は実務ができないのか——行政書士が売っている「商品」の話
士業界隈でよく聞く話がある。
「予備校で行政書士試験を教えている講師は、実務ができないから行政書士ではない」
あるいは、
「実務ができない行政書士が、予備校の講師をする」
たしかに、そういう一面はある。試験の知識と現場の仕事は別物だ。一方で、講師側から見れば、資格を活かして生活できている。このズレをどう考えればよいのか。
結論から言うと、対立の正体は「できる/できない」より、「売っている商品が違う」ことにある。
試験と実務は、同じ資格でも別の仕事である
行政書士は、試験合格と行政書士会への登録で開業できる。税理士のように、登録の前提として長い実務経験が求められるわけではない。
試験で問われるのは、条文、判例、択一の解き方、記述の型だ。現場で必要になるのは、役所のローカルルール、担当者の裁量、ヒアリング、補正対応、集客、報酬交渉である。
だから「試験を教える能力」と「案件を最後まで完走する能力」は別物だ。実務家が「予備校講師は実務を知らない」と言うとき、指しているのはこのギャップである。入管や建設業許可のように行政の裁量が大きい分野ほど、試験知識だけでは動きにくい。
ただし、ここから先の一般化は危うい。
「講師=未登録の解説者」ではない。登録して現役の行政書士を兼ねる講師もいる。事務所を持ちながら教える人もいる。「講師は全員、実務不能」は事実ではない。
「資格を活かして生活できている」は、十分に正当である
資格の使い方は、独立開業だけではない。
•  受験指導
•  実務講座、開業セミナー、執筆、添削
•  使用人行政書士としての勤務
•  企業の許認可担当
•  兼業開業
官公署提出書類の作成などを業として行うには登録が必要だ。一方、試験を教えること自体は独占業務ではない。それでも、合格した知識と説明力で収入を得ているという意味では、資格は活きている。
実務家の収入が不安定な年と、予備校講師の給与・コマ単価を比べると、後者の方が安定していることもある。その差が、「実務ができないから講師をしている」という見方を生みやすい。実際には、教えることが得意で、需要がある人がその仕事を選んでいる、という説明の方が正確なことが多い。
見るべきなのは、能力の上下ではなく商品の違い
整理すると、評価軸は三つに分かれる。
第一に、試験講師として優秀か。合格させるのが仕事なら、実務経験の有無より、出題傾向、説明、採点感覚の方が重要である。受験生が買うのは合格確率だ。
第二に、登録行政書士として業務ができるか。登録していれば、法的には行政書士である。実際に受任できるかは、分野、件数、人脈、営業力で決まる。未経験開業は制度上可能でも、準備不足だと受任できない、というのが現場の本音だ。
第三に、「本物の行政書士」という道徳評価。書類を何件こなしたかが正しさの基準、というのは一つの価値観にすぎない。教育で食うことも、資格を使う生き方である。
実務家が講師を見下すのも、講師が「試験さえ分かれば実務も同じ」と言うのも、どちらも過剰だ。試験と実務は連続していない。だから予備校は実務講座を別に売り、実務家は「試験合格は通過点」と言い続ける。
要するに、こうなる。
•  「講師は実務ができないから講師」は、一部には当たるが、全体の定義ではない
•  「資格を活かして生活できている」は正当である
•  問題になるのは、実務未経験のまま実務まで語ってしまう場合と、実務家が試験指導の専門性を認めない場合
聞き手として大事なのは、その人が「試験の話をしているのか、現場の話をしているのか」を切り分けることだ。同じ肩書きでも、売っている商品が違う。
「商品が違う」は、開業行政書士同士にも通じる
この説明は、予備校対実務の話だけではない。開業行政書士の間でも同じ構造がある。
「専門分野が違う」と言い換えると、かなりうまくいく。対立の正体は、上手い/下手より、何を売っているかの違いであることが多い。
ただ、専門分野と商品は重なるが、同じではない。
専門分野は、入管、建設業許可、相続、風俗営業、産廃といった対象領域である。商品は、「誰の、どの困りごとを、どの成果物として、いくらで引き受けるか」である。
同じ入管でも、就労ビザの単発申請と、採用設計まで含む顧問では商品が違う。同じ建設業でも、新規許可と、更新、業種追加、入札、コンプライアンス支援では売っているものが違う。だから「同じ行政書士なのに話が噛み合わない」が起きる。
予備校講師との対比も、この延長にある。講師の専門は「試験という制度への最適化」であり、開業行政書士の専門は「特定の行政手続と顧客関係の最適化」である。どちらも法律知識を使う。しかし顧客、成果物、評価基準が違う。
開業同士で言い換えるなら、こうなる。
「あの人は実務ができない」ではなく、「あの人は別の商品を売っている」。
「講師は行政書士じゃない」ではなく、「試験合格という商品の専門家だ」。
この整理をすると、業界内の上下関係の話はかなり減る。残るのは、本当に見るべき点だけだ。
その人が、自分の商品の範囲で責任を取れているか。
範囲外まで語っていないか。
肩書きが同じでも、商売は同じではない。行政書士という資格は広い。広い資格ほど、商品を混同した瞬間に、不必要な軽蔑が生まれる。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

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